理事長あいさつ

年度当初に当たり、改めて私たち一人一人が、平和と人権尊重を願う堅い思いを持ち続けなければと強く感じています。つどいの家は、「どんなに重いしょうがいのある人も、地域社会で差別されることなく、いきいきと自立した地域生活ができるよう、自己実現の場を保障し、支援する」という理念の下様々な活動を展開していますが、この事業展開そのものが世の中の動きと無関係ではいられず、様々な出来事について正確な情報を得るように努め、考え、感性を麻痺させないことが大切と考えています。

発生からもうすぐ6年になりますが、やまゆり園のとても悲しい事件がありました。最近でも障害者や高齢者の施設での虐待も報じられています。各地の出入国管理事務所での外国人の人権を軽視していると言わざるを得ない様々な問題、名古屋のウィシュマさんの事件もありました。クリニックを現場とした放火自死事件では、拡大自殺などという嫌な概念も登場しています。そして生活保護自己責任論、政治とカネや身内びいき、学術会議の任命拒否、今も続く沖縄の苦悩、ウイグル・香港・ロヒンギャ問題などなど。これらの背後には、つどいの家の理念とは相容れない自己中心、外国人や少数者に対する身勝手な差別意識など様々な心の歪みを感じます。

そして今、ロシアによるウクライナ侵略と様々な残虐行為という信じられない出来事を目の当たりにしています。ウクライナの人々の惨状はもとより、徴兵された若いロシア人兵士やその親はどう思っているのかなど考えたとき、ため息が出るばかりで辛くなりますが、現在の平穏に感謝しつつ、ともかく戦争反対、平和の実現を願い続けるしかありません。

つどいの家の事業環境の面では、やはり新型コロナウイルス感染症の蔓延に大きな影響を受け続けています。この間感染対策の徹底を期してきましたが、通所施設とグループホームにおいて集団感染が発生し一時休業する事態に至りました。今回の一件によりこのウイルスの感染力の強さを改めて痛感させられましたが、収束に向けた職員の大変な頑張りとご関係の皆様のご協力には、ただただ感謝するしかありません。もはやだれがどこで感染するかもわからない以上、感染防御を徹底しつつ小さな異変にも敏感に、ともかく早く、幅広に対応すること、ゾーニングや防護体制の事前の準備等々教訓をくみ取り、今後の糧としていきたいと思います。

また、休業からの再開時、「みんなで守ってくれてありがとう」、「通所やグループホームの大切さが改めて分かった」といったお声を頂きました。つどいの家が担う様々な事業が、本人ご家族の暮らしにとって欠かせないものなのだということを改めて認識し、コロナの蔓延は今しばらく続くことを前提に細心の注意を払いながら、状況に応じて柔軟にメリハリをつけた運営に当たりたいと考えています。

地域とともに歩むというつどいの家の本旨に則った対外発信、地域交流の取組みは、コロナの影響で現状不十分なものにとどまっていますが、易きに流れることなく、WEB活用、開催場所や時間、内容の工夫も行いながら、感染の状況等に応じて柔軟に対応できるよう準備を進めていきます。

本人・ご家族の願いに応える次なる展開に向け懸案となっているグループホームの新設については、この度のクラスター発生時の対応で得られた知見も踏まえ、外からもアクセス可能なトイレ等の水回りも確保して迅速確実にゾーニングできる環境をつくるなど、より安心で充実した生活の場として開設できるよう、今般のロシアショックなどによる建築物価の動向も注視しながら具体に取り組んでいきます。

法人全体の財務状況については、市内での感染拡大により移動支援やホームヘルプを一時休業せざるを得なかったことなどコロナの影響もボディーブローのように響いてきており、建設資金積立などの一部を目的外で取り崩して予算を編成せざるを得ませんでした。今後の感染拡大による収入減や感染対策に要する費用の増高も想定し、収入確保と費用節減のための地道な取り組みを積み重ね、積立金の取り崩しを極力抑えて運営できるよう取り組んでいきたいと思います。

ウクライナ問題や今後の日本経済の動向、そしてコロナの行方などなかなか先を見通しづらい日々が続きますが、今は夜明け前なのだと考え、厳しいときだからこそ気分転換にも心がけ楽天的でありたいと思います。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

2022年4月 社会福祉法人つどいの家 理事長 佐藤 清