「生きがいを感じる豊かな日中活動とは」

 

 なぜ、こういう題で、しょうがいがある人の暮らし方や働き方を考えなければならないかを問えば、それは、過去の歴史の中で、重いしょうがいのある人の暮らしは、生命の保障に留まる最低水準のもので、本人の意思は無視されることが多く、活動内容は、一方的に決められてきたからに相違ありません。

 しかし、今は、人権思想に基づき、本人主体の支援をしようという時代になりました。その前提としては日本国憲法や、ノーマライゼーション理念、国際障害者権利条約にある「完全参加と平等及び包容(インクルージョン)」 の理念です。

 さて、青年期のしょうがいの重い人が通所する生活介護事業所では、どんな日中活動をすれば、本人の満足を得られるのでしょうか。大切なのは、本人に問い、意思を確認することです。どんな重いしょうがいの人も意思があります。暮らしの中で,いろいろなことを感じ、思っていて、その思いを周囲の人に解ってほしいと願っています。しかしその思いを言葉で表現できず、自分で動けないから、諦めるしかない日々を過ごすのです。だから適切な支援がないと重いしょうがいのある人は、生きがいのある豊かな活動をするのが難しいのです。自ら体験を増やすことができないからこそ、支援者と共に体験を重ねて、本人の意思が立ち上がるのを見届け、個別支援計画を立てながらの日中活動支援が必要なのです。

ここが、たくさんの経験を重ねて人生の終局を迎えようとしている高齢者の身体介護が中心の福祉と異なるところです。

当法人の生活介護事業所では、次のような活動をおこなっています。

 

①寄り添う支援 (意思表出支援→意思決定支援)

 

 まずは、排泄や食事、移動の他、料理や生け花などの様々な生活活動の場面で寄り添いながら、表情やしぐさから快不快や好き嫌いを見分けて意思を確認することに力を注ぎます。また活動は、絵カードや、ipad等を活用して選んでもらいますが、本人の経験が少なければ選ぶのも難しく、意思の確定は難しいのです。それでも、小さなサインを見分け本人のデマンドを大切にして行動しながら、本人の意思の仮説を立てていくことを繰り返していくと、徐々に意思の表出が目立つようになります。

 

②出かける支援 (施設を空っぽにしよう)-個別化と社会資源の活用-

 

しょうがいがあるからと活動を制限するのではなく、普通の人が、青少年期に体験するであろう事は、なんでも活動に取り入れます。激しい動きが伴いルールが難しいスポーツ等は、観戦のみに留まりますが、それでも貴重な体験となります。美術館や図書館、映画館、水族館、動物園などの文化施設、温泉などの小旅行や買い物にもよく行きます。そして、その際、時間がかかるし職員の負担もあり、公用車が効率的なのですが、私は、なるべく、バスや地下鉄等での移動を薦めております。バリアフリー法制定や、人にやさしいまちづくり条例などにより、車椅子の人も街に出やすい物理的環境が整備されてきました。問題なのは、心のバリアです。人は、誰でも、見たこともない経験したことの無いことには警戒心を持ち、避けて排除しようとしがちです。だからこそ、街に出ることが必要なのです。この世の中には色々な人がいて、その一人ひとりがみんな大事で、その総合体が社会なのだという事に気付いて頂かなければなりません。私は、よくトラブルはチャンスということばで、職員を励まします。例えばこだわりの強い自閉症の方が、バスで自分の決めた座席に座れないと執拗に騒いだりする場合があります。そんな時にしょうがいの理解がないと、この人は我儘で嫌な奴だと決めつけて怒り出す人もいます。そんな時こそチャンス、そばに寄り添う人が、しょうがいについて説明することができるのです。触れ合うことで、慣れることで、障害故の行動を理解し許容する気持ちが生まれてきます。そういったことの繰り返しが、多様性を認め合う共生社会の実現に繫がるのだと思っています。

 

③アート活動支援 (湧き出る感情の表現)

 

 音楽や美術、踊りなどに触れる機会を提供し、利用者自らが動き表現する意欲を醸成します。いい芸術に触れると、表情が輝きます。アート活動はみんな大好きです。必要な人は支援者が最低限の手添えをしながら、その人なりの動きで、色を塗り線を描き、音に合わせて体を揺らします。その際、こちらの価値観や審美眼を押し付けず、自由に表現してもらうことに留意すると、本人は内に秘めているものを徐々に表現し始めます。

 

④健康への支援

 

 健康チェック、医療的ケア、機能訓練、福祉用具の活用、性を認め大切にすること等をPT、OT,ナースとの連携のもとに必要な支援を行い、時には通院同行等で家族の支援を行いながら、医師との連絡を密にして共通理解を持ちます。3号研修を受けた支援員の医療的ケアの定着が課題です。

 

⑤地域交流 (誰もが住みやすい街、共生の社会の実現のために)支援

コンサートや夏祭り、バザー等のイベントに参画あるいは参加して役割を持ち、多くの人々と触れ合うことの喜びを分かち合います。創造力と想像力を育み、しょうがいの理解を進める大切な活動です。

 

⑥存在の豊かさ(はたらき)を示す (働く活動)

 働いてお金を得るばかりが、働く活動とは考えません。勿論、働きたいという気持ちは大切にして、一部の人は、職員と共にパン作りをして販売もしますが、人件費や諸費用を賄える収益とはなっていません。しかし、何かのために誰かのために人が動くことで、社会が豊かになります。空き缶回収等のリサイクル活動も立派な社会貢献です。重いしょうがいのある人の場合は、存在そのものが、他者に生きることの意義を伝える役割をもっていて、それが、彼らの社会啓発活動です。生きることが仕事。彼等の自立のための所得保障が必要です。

 

⑦つなぐ支援(ケアマネージメント)

 指定相談事業所サービス利用計画をもとに、自己完結、施設完結の支援から離れ、利用者の状態に応じて、他資源につなぎます。

 

最後に

 

 生活介護事業所には知的障害の他に、身体、盲、聾、発達障害など重度で多様な障害を重複している人々が通所しています。これらの人々が混在する中で、以上の本人主体の活動をするには、十分な人的配置と専門性の確保が必須です。近年の人材不足は深刻です。人材確保のための給付費増額や人権を考慮した制度設計等の合理的配慮が求められます。人権を守ることが私たちの使命です。